間違ってる。
あなたがそう答えれば、彼女は取り乱したように叫ぶ。
「じゃあ、じゃあ、どうしたらいいの?今更間違っているって、そんな、そんなこと、気づきたくなかった。もっと生きたい、もっと、生きたいよ!」
悲痛な叫び。彼女は泣いていた。
今までで一番、感情的な彼女の姿。
あなたが何か言おうとしたところで、あなたは今日も意識を手放した。
あなたは目を覚ます。
彼女の悲痛な叫びがまだ耳に残っている。
あなたはどこか使命感のような物を感じて、いやそれは、責任というべきかもしれない。
とにかく導かれるように、彼女の話を頼りに何とか場所を探し当て、村へと向かった。
電車とバスを乗り継いで向かう。
バスは運転手と自分しか乗っていない。
田舎特有のフレンドリーさで運転手が声をかけてくる。
「お客さん観光?こんなバスでどこに行くんだい?」
廃村のことをいえば、運転手は驚いたように目を開く。
「あぁ、もしかしてオカルト好きの方?」
「いやぁ、一部では有名らしいね。あの村はある日突然村人が全員いなくなって廃村になったって。」
「まぁ、私もそのくらいしか知らないんですがね。」
バスを降りて、山道を歩いていく。
朝出たのについたころにはもう夕方に差し掛かっていた。
そこは確かに廃村だった。誰もいない。気配もない。
静かな廃村の中を歩いていく。
ボロボロになった家屋、雑草が生い茂る道。
そうして奥に進んでいくと、入り口にボロボロのしめ縄と紙垂がつけられた洞窟が見つかる。
ここが、彼女がいた場所なのか。
そのまま中に入っていけば、そこは年季ははいっているものの、夢とそっくりそのままの場所だった。
畳、質素な机に、小さな棚。
夢と同じ光景。その棚に、鏡がないことと、彼女がいないことを除いて。
何をしているのか。そう思いながら洞窟を出る。
夕焼けに染まった廃村。
そこに、一人の少女が立っていた。
それは、夢で見たのとそっくり同じ、彼女だった。
「こんにちは。待っていました。」
50年以上前に生きていたはずの彼女が、同じ姿で目の前に現れたことにSANc(1d3/1d5)
発狂した場合、確定で探索者を少女に釘付けにしてしまう極度の恐怖症。
「神様にはね、村人をあげたの。そうしたら、私のもっと生きたいって願いを叶えてくれた!」
そういって彼女は美しく笑った。美しくて、恐ろしかった。
「ありがとう。あなたのおかげよ。」
そういって彼女が笑うのと同時に、意識が薄れていく。
「おやすみなさい。」
遠のく意識の中、彼女の声がかすかに聞こえた。
目が覚めると、朝だった。
あなたは、この廃村で倒れてしまったようだった。
手の中に何かがある。
それは、彼女が着ていたセーラー服のリボンだった。その存在が、あれが夢ではないと物語っていた。
それから、どれだけ探そうと廃村に彼女の姿はなかった。
何度訪れてもそこにはただの廃村があるだけだ。
もちろん町で偶然出会うなんてことも無い。
あの廃村は、来月建設予定のダムによって沈むことが決まったらしい。
あれ以来、もう奇妙な夢は見ていない。
END2 SAN報酬1d6

